職場での旧姓使用、認めないとダメ?

こんにちは、社会保険労務士の菊池です。

 今回も人事労務の素朴な疑問について書きたいと思います。

~職場での旧姓使用、認めないとダメ?~

Q:先日、女性社員が結婚しました。職場では旧姓を使用したいと言っていますが、
  管理が煩雑になりそうで不安です。本人からの希望があれば旧姓使用を認めな
  ければならないのでしょうか。

A:旧姓使用を認めなければならないという法律はありませんが、社員の旧姓
  使用が認められないことを苦痛に感じ、訴訟に発展したケースもあります。
  管理の手間は増えますが、時代の流れから考えても認めてあげた方がよいと
  考えます。


○最高裁と地裁の判決に混乱
 平成27年12月、最高裁が「夫婦は同姓」と定めた法律が憲法違反ではないと
判断しました。
 その理由の1つとして、職場などでの旧姓使用が広がってきているため姓の
変更による不利益が緩和されることがあげられました。
 一方で、私立校の女性教員が職員の旧姓使用が認められず起こした訴訟では、
「職場で戸籍姓の使用を求めることには合理性があり、旧姓を使えないとして
も違法ではない」と判断され、混乱する声があがっています。


○職場で姓が変わるデメリット
 職場で使う姓が変わると、次のようなデメリットがあります。

・名刺やメールアドレスを変えて顧客や取引先に知らせなければならない。離婚
 した場合も知らせなければならず精神的に苦痛がともなう。
・結婚前に発表した論文や本の著者名が変わり、自分の成果であることが認識されない。


         ~旧姓使用のメリット・デメリット~
      メリット             デメリット
本人  ・キャリアが分断されない
    ・氏名変更の連絡がいらない     ・使い分けが面倒(何が旧姓で何が戸籍名か)

会社  ・女性社員のモチベーション維持  ・2つの名前を管理しなければならない
    ・電話の取次ぎなどがスムーズ


         ~旧姓と戸籍名の使い分け~
旧姓を使用          名刺、メール、社内資料など
戸籍名を使用         賃金台帳、源泉徴収票、社会保険の手続きなど
会社によって扱いが異なる   社員名簿、身分証明書、出勤簿、住所録、給与明細など


 特に営業職や専門職においては、結婚前に築いた信用や評価の基礎となる名前が
変わることで、キャリアが分断されてしまいます。また、結婚や離婚といった仕事
とは関係のないプライベートな事を、いちいち社内外に説明しなければならない
のが負担だという声もあります。


○8割超の企業が旧姓使用認める
 平成28年の調査では、職場での旧姓使用を認めている企業は全体の82.9%、その
うち実際に職場で旧姓を使用している社員が「いる」企業は98.0%という
結果でした。
※労務行政研究所「共働き時代における企業の人事施策アンケート」

 国家資格でも、戸籍名に旧姓を併記して登録し、旧姓で仕事ができるものが
増えてきています。今後は、マイナンバーカードに旧姓を併記できるようになる
ほか、住民票にも旧姓の欄が設けられる見込みです。


○旧姓使用を認めなければならない?
 今のところ職場で旧姓使用を認めなければならないという法律はありません。
認めるかどうかは企業の自由です。
 しかし過去に、旧姓使用が認められないことを社員が苦痛に感じ、訴訟に発展した
例もあります。冒頭で紹介した裁判例では「職場で戸籍姓の使用を求めることに
合理性がある」と判断されましたが、今後マイナンバーや住民票にも旧姓が併記
できるようになった場合、同じように判断されるかは疑問です。


○会社は管理の手間が増えるが…
 旧姓使用を認める場合でも、金融機関や国が関わる公的な書類は現在のところ
戸籍姓が要求されるため、経理や人事は旧姓と戸籍名の両方を把握して管理しな
ければなりません。管理に手間がかかるため、旧姓使用を認めたくないという
企業側の言い分も理解できます。
 しかし、結婚により姓を変えるのは女性の方が圧倒的に多いという現状において、
旧姓使用を認めないことは、不利益や負担を女性にばかり負わせているとも言え
ます。時代の流れから考えても、旧姓使用を認めてあげた方がよいのではない
でしょうか?



では次回もお楽しみに!