パートタイマーに通勤手当を支給しないのは違法?

こんにちは、社会保険労務士の菊池です。

 今回も人事労務の素朴な疑問について書きたいと思います。

~パートタイマーに通勤手当を支給しないのは違法?~

Q.当社では、通勤手当は正社員のみに支給し、パートタイマーには支給していません。
 この点についてパートタイマーから違法ではないかと指摘されました。
 通勤手当は法律で支給が義務付けられているものではないため、パートタイマー
 に支給するかどうかは会社の自由では?

A.正社員とパートタイマーの手当に格差を設けることについて納得できる理由がある
 のであれば、「会社の自由」で問題ないのですが、通勤手当の格差については、
 近年、裁判で「不合理な格差であり違法」と判断される例が増えています。


○通勤手当の支給は義務ではない
 確かに通勤手当の支給は法律で義務付けられているものではありません。実際には
支給する会社が大半ですが、「支給しない」と就業規則で定めたとしても違法では
ありません。
 調査結果※によると、正社員に通勤手当を支給する企業は約9割、パートタイマー
に支給する企業約8割となっています。
※平成28年パートタイム労働者総合実態調査


○正社員とパートタイマーの格差
 しかし、問題となるのは、同じ職場において正社員にだけ支給して、パートタイマー
には支給しないという点です。このような格差は許されるのでしょうか。
 多くの経営者は、正社員とパートタイマーでは仕事の範囲や責任がちがうため、資金
に格差があるのは当然と考えているようです。通勤手当に関しても、正社員とパート
タイマーで格差を設けてもよいという考えがあるのでしょう。


○「不合理な格差」は違法
 しかし労働契約法20条では、無期契約労働者と有期契約労働者との間で、労働条件に
不合理な格差を設けてはならないと定めています。
 通勤手当の格差は「不合理な格判例を1つご紹介しましょう。海産物の運輸会社に
おいて正社員には月額1万円の通勤手当、パートタイマーには差」なのかどうか、
これが問題なのです。
 これについて、最近の裁月額5,000円の通勤手当を支給していた事件です。
 判決では、「いずれの職務内容も、卸売市場での作業を中核とするものであり、
パートタイマーか正社員かを問わず、仕事場への通勤を要し、多くの者が自家用車で
通勤しているという点で、両者で相違はなく、パート社員の方が通勤時間や通勤経路
が短いといった事情もうかがわれない」「通勤手当の相違に合理的な理由は見いだ
せず、通勤手当の性質に照らし合わせると、職務内容の差異等を踏まえても、この
相違は不合理なものといわざるをえない」として相違と判断されました。
 なお本件では、後に正社員の通勤手当が5,000円に削減され格差が解消されています。
その反面、正社員の給与総額が減額しないように正社員の職能給を1万円増額するという
対応をとっており、パートタイマーは「実質的に通勤手当の格差が存続している」と
主張しましたが、「職能給と通勤手当は別個の手当であるため同視できない」として
却下しました。


○職務が異なる場合は?
 今年6月におこなわれた「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決でも、正社員と
契約社員の通勤手当の相違について判断がありました。
 最高裁判決では、次のような理由で通勤手当の格差を違法と判断しています。

①通勤手当は通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給されるものであり、期間の
 定めの有無によって通勤に要する費用が異なるものではない
②職務の内容および配置の変更の範囲が異なることは通勤に要する費用の多寡とは
 直接関係しない
③通勤手当に差異を設けることが不合理であるとの評価を妨げるその他の事情も
 うかがわれない
 
 この事件は、正社員と契約社員とで職務内容が同一でしたが、上記の理由からすると、
職務が異なる場合でも特別な事情がない限りは通勤手当の相違は違法と判断される可能性
が高いと言えるでしょう。いずれの職務も通勤に関してちがいが生じることは基本的
にはないでしょうから、通勤手当に格差を設けるのは避けた方がよいと考えます。



では次回もお楽しみに!